第19回 東京・世田谷区代沢中町会の皆さん
「エコライフ実践活動in代沢中町会'97とは」
東京・世田谷区代沢中町会の1500世帯が1997年11月4日〜12月10日の37日間、環境にやさしい行動を実行し、アンケートに答えるというもの。二酸化炭素(CO2)の排出量に着目した「エコライフ実行リスト」という行動メニューや「Aさん家族のエコライフ」といったある家庭の一日の生活行動に沿ってエコライフ行動を紹介した資料が各家庭に配布されている。アンケートでは、エコライフ実践活動の具体的内容や実践後の感想、電気やガスの使用量を答えることになっている。
一つのまとまった地域が1カ月間にわたり「環境にやさしい」ライフスタイルを実践し、その効果を具体的数字で把握するという取り組みは全国でも初めて。アンケートの集計結果は3月に公表されることになっている。環境庁および世田谷区が同町会の全面的な協力により展開。


宗 晴さん
9年前から代沢中町会町会長を務める。ゴミ問題など身近な環境問題に取り組んできた。世田谷区が1994年から取り組んでいる一連の環境基本条例、環境基本計画、環境行動指針づくりにも積極的に関わり、市民と行政のパートナーシップを実践している。大正8年生まれ。娘さん夫婦(40歳代)とお孫さん(中学2年生と小学5年生)2人の5人家族。

城 晴子さん 
20年以上前から代沢中町に暮らす。ご主人(65歳)と2人暮らし。

荒川 千恵子さん
専業主婦。定年退職したばかりのご主人(60歳)と息子さん(27歳)の3人家族。千恵子さん自身は58年間、代沢中町に暮らしている。


こんなのあたり前じゃないの少し生活態度を変えるだけ
日々の生活と温暖化の関わりに気づくまで

幸田 エコライフ実践活動に参加なさってどうですか。最初、この話がきたときどう思いましたか。
荒川 私は是非やってみようと思いました。やはり、地球温暖化ということが頭にありましたから。
幸田 ふだんからかなり環境問題にご関心が強かったのですか。
荒川 いいえ。ふだんは全然。電気やガスを使うことが二酸化炭素(CO2)を出しているということは今回、エコライフ実践活動を始めてから気がついたのです。それまでは車からのCO2の排出量が多いだろうなとは思っていたのですが。
幸田 テレビで「あなたは温水洗浄便座の使用をやめられますか」という質問に「温水洗浄便座と温暖化とどういう関係があるのか」と聞いている人がいました。ふだんの生活と温暖化の関係は意識しないとわかりにくいところがありますよね
荒川 毎日の生活とCO2の排出を結びつけることができなかったんですけれど、いろいろと説明をうかがってわかるようになりました。
宗  私がエコライフ実践活動をお受けしたのは、CO2の問題は車とか工場や電力会社の煙突ばかりと思っているのは間違いで、自分たち自身がCO2を排出している責任者だと皆さんにはっきり意識して欲しいなあと思ったから。
幸田 具体的にはどんなことをやっていらっしゃるんでしょうか。
  皆さん、すでに実践していらっしゃる方がほとんどですよね。
  環境庁から配布された「エコライフ行動リスト」を見て、「こんなのあたり前じゃないの」というのが初めの感想。ただし、私たちがこれまで裕福で、ルーズだったことに気づいて、少し自分たちの生活の態度を変えるだけの話。
幸田 地球の温暖化というスケールの大きな話とこういう身近な生活レベルの取り組みの関わりについてどのように受けとめられましたか。もっとすごいことを要求されるんじゃないかなあと思われませんでしたか。
  もっと大変なことをしなくてはいけないと思っていたんです。まず、環境庁の方がいらして説明があるとのことでしたので。ちょっと身構えた。この「エコライフ行動リスト」を見たら「何だこんなことか」と、戦時中に育っている私たちにとっては当然していることではないかという感じでした。
  待機電力の無駄をなくすにはコンセントから抜く必要がありますが、年寄りにとってはコンセントの位置に工夫がいりますね。
幸田 設計の段階で必要ですね。
  簡単に手が届くところにコンセントの位置を変えてもらう。また、楽に取り外しができるようなものを開発していただけるとありがたいなと思いますね。
荒川 待機電力という言葉も初めて知りました。待機電力が家庭で使用される電力のかなりのウェイトを占めていることにもびっくりしました。
幸田 家庭で使われている電力の15%が待機電力だと聞いてびっくりしますね。
 いろいろと実行するのにどんなところが大変でしたか
  家族に「こういうことをやりなさい」といきなり言ってもきかないから、その意味を伝えなくてはいけない。孫には「あなたたちが大きくなったときの問題なんですよ」と伝える。「環境が変化してくるのは50年か100年先か、私たちの態度次第で変わるんだから、今からこういうことをするのはあなたたちの世代のことなんですよ」と言えば、別に反抗しない。なんでするかという根本を教える。
幸田 そういう話をきいたときの子どもたちの反応はどうでしたか。
  環境がこんな風に変わるということ、自分たちが好き放題、使いたい放題やっていたらこういう結果になるということを学校では扱っていないようです。私は孫たちに「マラリア蚊がぶんぶん飛んできても構わないかどうかよく考えてごらん」と言うんです。(笑)
幸田 大人の方はどうですか。ご主人に理解してもらうのは難しくはなかったですか。
  もともと主人のほうが「電気をつけっぱなしだぞ」などと言います。世代が上だからでしょうか。
  うちは婿が遅く帰ってきてテレビを12時過ぎまで見ていた。けれど、エコライフ実践行動の資料を置いておいたら12時でやめるようになりました。(笑)
幸田 みな一つひとつは簡単そうですけど、続けるのは難しいのではありませんか。
  習慣になっていけば、それほどでもありません。
  CO2を排出しているという自覚があれば、やるんじゃないですかね。自覚がなければいくら省エネの自動車をつくってもその分だけ多く乗り回してしまったら同じことでしょう。やはり意識をもつことが一番先のこと
幸田 今の子どもたちはテレビ文化で育っていますよね。そんな子どもたちからは嫌だなという声が上がってくるかなという気もしますが。
  孫が、テレビゲームを始めると結末が出るまでやらないと気が済まないので2時間でも3時間でもやっていた。そこで父親がストップをかけたんです。どうするかなあ、少しかわいそうだなあとみていたら、今では学校でお友達と遊んでくるようになった。


エコライフから変わる私たちの意識

幸田 今のお話のように、エコライフ実践活動を始めてから家庭で変わったことがありますか。
  家族が多い、老人がいる、子供がいるといった家族構成によっていろいろな問題はあると思います。例えば、室内の温度を低くするといっても高齢者がいる家庭では無理でしょう。私たちは、室内気温が20度というとちょっと肌寒い感じがします。どうしたらいいのかと思って、昔はそういえばもっと着ていたなと。朝起きたら、必ず1枚多く着るという習慣に変えました。それから靴下も厚手のものを用意しています。
荒川 うちは27歳になる息子と主人と私という家族構成です。主人が4月から定年になりまして、この1年間は家におります。そうすると去年よりは電力などのエネルギー消費量は増えたのではないかと思います。エコライフ実践活動を始めてからは24時間風呂をやめました。結果的にはエネルギー使用量の削減には貢献すると思います。
 お風呂が2階にもありまして、息子は遅く帰ってくるとそこでシャワーを浴びるという生活だったんですけれど、今では続けて皆が入るということで、うちの場合は集中的にお風呂で点数を稼いでいます。結果はどうなるかなあと思います。
幸田 エコライフ実践活動をするにあたって、お金をかけないでできる工夫を教えてください。
宗  これから冬になると皆さん暖房を入れます。温度計をおおいに活用していただきたい。私は自分が行く部屋すべてに温度計を置いています。温度計を見ながらつねに暖房を入れるかどうかを判断しているの。温度計を見た上で「21度になりましたから暖房を消しますよ」と言えば、誰も何も言わない。けれど、温度計なしでは納得しないこともあるでしょう。反抗する人も出てくるだろうと思うの。
荒川 そこで1枚多く着るとか。紙やプラスチックの包装材を無駄にしないためにもスーパーなどに買い物袋を持っていくというのも一つのお金のかからない方法。
幸田 今回、この取り組みをなさってご自分の中で何か変わったなと思われたこと、気づかれたことはありますか。
荒川 「環境問題」や「二酸化炭素」という文字が見えると、新聞でも端から端まで読むようになりました。いろいろ詳しくなったような気がします。ゴミ問題にも直結してくる。イースター島でもヤシの木を伐採し尽くして、文明が絶滅したという歴史が、これからの地球の将来ではないか、という話しを聞いて、本当にここで考えていかないといけないと思いました。


広げたいエコライフ

幸田 やはり参加なさって良かったと思いますか。
荒川 私は良かったと思います。ぜひ、他の地域でも、全国的にも広げて欲しいと思います。
  ここが発信地になってね。
城  皆さん、新聞、ラジオ、テレビでたくさん頭の中には入っているんですよね。この前、同期会に参加したときに、こういう運動をしていると話したら、「知ってる、知ってる。コンセントを抜くんでしょ」と。その後細かく説明したんです。徐々に広げていくことが大事ではないでしょうか。
 待機電力がCO2排出につながっているということが私たちには今までわからなかった。手元のリモコンを押せば便利という感じでしたけれど、それではいけないことがわかった。
 若い方は節約すればそれだけ出費が少なくなるというところまでは考えるようなんです。けれど、そこから先の環境のことまで結びつけるのがなかなか大変なようです。電気でもガスでも消費量が少なくなれば家計も助かる。一石二鳥ですから、もっと積極的にPRしてください。
宗  どういうものに電力を使うべきかを根本から考え直していただきたい。何事にも優先的に使うべきかということを国民が声を出して言っていく。原子力発電所を20基つくりますなんて言うけれど、その前に電力をどういうところに使うべきか考えてからにして欲しいと思います。
幸田 エコライフ実践活動を通して、ご自分の実感を通して、行政や企業に期待したいことはどのようなことになるでしょう。待機電力を使う製品を減らして欲しいとか。それともそういうことは消費者側の使い方で対処すべきだと思いますか。
荒川 ぜひ切り替えて欲しいです。洗濯機などは節水型のものが出てきていますので、節水・節電の方向で進めていって欲しいです。
  企業も変わっていくんじゃないでしょうか。国民が大きな声を出して「こういうものが必要なんだ」と言えば、そういう方向へ転換していく。本当の消費者のニーズにこそ企業は応えて欲しい。
幸田 「CO2を減らすようなライフスタイルは非常に暗いイメージ、がまんを強いるもの」という人がいます。実際になさってみて、やはりがまんや犠牲という感じを持ちましたか。
宗  そんなに思わないわね。やはり、先を考えればやらなくちゃいけないんじゃないかしら。なくてがまんするのとは違う。
荒川 がまんといっても、ぜいたくながまんです。戦時中みたいながまんとは違う。ちょっと頭を使う程度のがまんですから。それに走り回るほど急いでやる必要もない。お風呂のお水を選択に利用するために私の家ではポンプがないので、バケツで汲むんです。つい面倒でやっていなかったんですけれど、今回やり始めたんです。これがCO2の排出量削減に結びつくんだと実感できる動作なんです。
幸田 ぜひこれからも、日本中、もしかしたら世界中から注目を受ける活動ですので、お一人お一人がコアになって、多くの人に広げていってください。
 ありがとうございました。
(1997年11月21日 東京都・世田谷区内にてインタビュー)

インタビューを終えて

 私たちの日々の生活と地球の温暖化との関係は、言われてみれば「ああ、そうか」というほど単純に結びついているものの、意識して考えないとぴんときません。それは、これまでの私たちの生活習慣が、そうした意識を必要とせず、お金さえ払えば便利な生活を得るための義務を果たしたことになっていたからでしょう。しかし、惜しみなく消費されるエネルギーの裏で、二酸化炭素という大きな「つけ」が大気にたまっていたのです。
 宗さん、城さん、荒川さんとお会いして、私なりに学んだことがあります。それは、環境に配慮した生活とは「あたり前のこと」という彼女たちの感想にあるように、難しい、費用のかかる、犠牲を強いるような試練ではなく、新しい習慣を身につけることだということです。新しい習慣は初めは大変でも、慣れてしまえばあたり前。その新しい習慣こそが、新しい文化を生みだす力となるのだとつくづく感じました。(幸田 シャーミン)



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