第32回 デニス バンクス ナワ カミックさん(アメリカインディアンリーダー)
Dennis Banks, Nowa Cumig
<プロフィール>
1936年、アメリカ ミネソタ州リーチ レイク インディアン居留地にアニシナベ族(Anishin Abe)として生まれる。68年、アメリカインディアン運動を結成し、アメリカインディアンの権利回復のための活動を始める。
 大地の摂理と人間との関係を説くネイティブの智恵を世界に伝えようと、78年8月「セイクレッド(聖なる)ラン〜大地と生命のために走ろう」を提唱し、世界各地を走り始める。95年の戦後50周年の節目に広島で戦争犠牲者へ祈りを捧げるなどの活動も含めて、日本にも数度来日している。
 「ナワ カミック(Nowa Cumig)」はインディアン名で、「外に立てる者」の意。



All Life is Sacred Dennis Banks

The Earth is looked upon as our Mother.
The Moon is looked upon as our Grandmother.
The Sun is looked upon as our Oldest Brother.
The Sky is looked upon as our Father.
The Rocks are looked up as our Oldest Teachers.

We look upon the Trees as our Brothers and Sisters.
We look upon the Four-Leggeds as our Relatives.
We look upon the Birds as our Relatives.
Even the Tiniest Insect is Related to us.
We are All Related.
The Water is a sacred element of life.
Fire is Sacred.
The Air we breathe is sacred.

すべてのいのちは神聖なものである  デニス・バンクス

地球は、私たちの母親として敬われている。
月は、私たちの祖母として敬われている。
太陽は、私たちの最も年老いた兄として敬われている。
空は、私たちの父親として敬われている。
岩や石は、私たちの最も年老いた教師として敬われている。

私たちは、木々を私たちの兄弟や姉妹として敬う。
私たちは、動物たち(四本足で歩くものたち)を、私たちの親族(血のつながったものたち)として敬う。
私たちはとりたちを私たちの親類(血のつながったものたち)として敬う。
最も小さな虫ですら、私たちの血がつながっている。
私たちは、みなつながっている(ひとつのものである)。
水は、いのちの聖なる要素(元素 エレメント)(のひとつ)である。
火は、神聖なものである。
私たちが呼吸する空気は、神聖なものである。

申し訳ありませんが、魚をとります。生きるために少しいただきます。


アメリカインディアンと環境

幸田 セイクレッドランについてご説明いただけますか。
バンクス 1977年にカナダのバンクーバーに何百人というインディアンのリーダーが集まりました。この時、5日間、「環境」についてだけ話し続けました。魚、カエル、酸性雨、すべての話が環境に関わることだったのです。自分たちはどうすべきかと考えたときに、企業に責任を押し付ける代わりに、自分たちの儀式をしっかりしたものにすることで、彼らが変えなくてはいけないことに気づくのではないかと思った。
 そこで私が300部族から意見を集約して、4ページにわたるプレスリリースを準備しました。このメッセージをランニングしながら伝えようと、78年、500マイルの距離を自分だけで走ることを計画した。この話が北米全土に伝わると、鳴りやまないほどの電話があり、私は興奮した。みな私のランニングに参加したいということだった。
幸田 どのような人びとが参加したいと言ってきたのですか。
バンクス アメリカインディアン、白人、アフリカ系アメリカ人、アジア系アメリカ人。150人のランナーが集まった。
幸田 その時、バンクスさんは何歳くらいだったのですか。
バンクス 42歳でした。「セイクレッドラン」はこのようにして始まりました。今でも毎年カリフォルニアで500マイル走っています。
幸田 時期はいつですか。
バンクス 7月です。ケンタッキー、インディアナ、オハイオの各州でも行っています。
幸田 そもそも環境問題について話し合うことになったきっかけは何だったのでしょうか。
バンクス われわれにとっては常に大きな課題なのです。私たちの基本的な信念は「私たちは母なる地球とつながっている」ということです。その時、ニューヨークに行き、木々が上部から死んでいる様子を自分の目で確かめた。「自分たちに酸素を与えてくれる種に対して、どうして人類はこんなことができるんだろう」と思いました。
 ニューメキシコではウラン鉱石を切り出した後の石材など、放射能で汚染されているもので氾濫した川を目の当たりにした。最悪なのは、彼らは50年代にはウラニウム鉱山から掘り出した汚染されたブロックをナバホ族の居留地に運んで、ただで家がつくれると言って彼らに与えた。そして実際にそれを使って家が建てられたのです。
幸田 信じられませんね。鉱山会社ですか。
バンクス そうです。ナバホ族を彼らの土地から追い出して、ナバホの土地で採掘活動をして、別の場所に採掘場所から出たブロックで「家をつくってあげる」と。15の住居をつくったのです。2年以内には子供たちは咳をし始め、年寄りも咳をし始めて死んでいった。
幸田 悲惨な話ですね。
バンクス われわれ先住民は北米大陸の世話人として責務があると育てられている。このような環境破壊を目の当たりにして、ただただ泣いて座っているわけにはいかない。20年以上も走ってきて、ゆっくりだけれど、公害、大気汚染、土壌汚染、水質汚濁に関心が高まってきた。アメリカ社会は変化するのがゆっくりなんだよ。
 若い人の間から、新しい方向性が生まれてくるのを感じている。とにかく私は歩き、または走り続ける。若い世代、日本人であろうとアメリカ人であろうと、彼らが変化を起こすまで、彼らと走り、会って、話して、伝えたい。
幸田 何人くらいの人が一緒に走るのですか。
バンクス 次のランニングはオーストラリアですが、200人ほどが世界中から参加する予定です。日本から50人、アメリカから20人くらい。アメリカ人のほとんどはアメリカインディアンです。
幸田 世界のさまざまな国で走られて、人びとの反応は違いますか。
バンクス 日本の高校生は私が言うことを信じない。「どうしたら樹木が自分の兄弟・親戚だと思えるのか」という質問がくることが多い。若い白人の若者も同じ。若いインディアンからはもちろんこういう質問はありえない。「どうしてバッファローが兄弟なのか」。われわれはつながっているという哲学を、環境から離れた状態で育った人びとに理解してもらうのが最も難しい。


受け継がれる人間と自然の「聖なる」関係

幸田 どのようにして教えるのですか。
バンクス 私は木から始めます。樹木が繁殖しているところにわれわれも繁殖する。これは誰もが持っていなければならない基本的な理解です。この関係に少し焦点を当ててみようと問いかけます。木も私たちもお互いの呼吸で結ばれている。私たちのはき出した息を木は吸ってくれて、彼らがはき出した息を私たちは吸う。樹木がなければ私たちは生きていけない、死んでしまう。これが「聖なる」関係であるというふうに伝えます。
幸田 バンクスさんご自身は幼いころ、ご両親や大人からどのようにして教わったのですか。
バンクス 魚、アヒル、ワイルドライス(まこも、イネ科の多年草)、メープルシロップ、この四つとともに私は育ちました。私たちは漁業民族なので、湖で魚を釣ります。また、ワイルドライスも収穫します。祖母は船で刈り取ったワイルドライスの一部を再びまいていました。アヒルにも分け与えなくてはいけないと話していました。魚釣りに行くと祖父は土地にたばこを置いていました。魚を与えてくれる土地に感謝をしているのです。
幸田 神への捧げものがたばこなのですね。
バンクス そうです。「申し訳ありませんが、魚をとります。生きるために少しいただきます」と祈ります。春にメープルシロップをとるときもたばこを捧げて、1本1本の木に触れながら感謝し長い祈りを捧げます。
幸田 バンクスさんの部族の名前は。
バンクス アニシナベ(Anishin Abe)族です。米国とカナダに8万人ずつくらい住んでいます。
幸田 アニシナベ族はどのような文化、歴史を受け継いでこられたのですか。
バンクス 森に暮らす部族です。基本的には漁業と狩猟。クマ、シカ、エルク、アメリカヘラジカ、ビーバー、ブルーベリー、ラズベリー、野生のりんご、プラムやぶどうなど、私たちを支えている基本的な食べ物です。


大きい女性の役割

幸田 女性の役割はどのようなものですか。男性が権威であるような印象があるのですが。
バンクス クランマザー(一族の母)が部族の中で最も高い地位にあります。男のリーダーはクランマザーによって「角を切り取られる」、つまり権力を失ってしまうこともあります。つまり女性が実際はアメリカインディアンの部族ではリーダーなのです。男性は部族のため、白人などと交渉するとき、一度話を持ち帰ってクランマザーに決定を委ねるのです。
幸田 長い間、多くの人びとに働きかけてこられて、地球環境問題の現状をどのようにご覧になりますか。
バンクス 母なる地球はみずから清浄できる力を持っている。私たち人類が全滅したとしても地球は生き残る。地球が清浄化するなかで私たちは死ぬ運命にあるかもしれない。地球が(人間よりも)勝っていることを理解しなくてはいけない。人類が地球を支配しているのではなくて、地球とともに生きることが必要不可欠なのだ。もし産業界がこうした考え方をするようになれば、方向を変えることができると思う。
幸田 バンクスさんご自身の活動の一番大きな成果は何だとお考えですか。
バンクス ランニングプログラムがアメリカ全土にわたって大きくなったことです。とくに若いアメリカ人、黒人も白人もインディアンも、環境問題を掲げたランニングプログラムが全米に広がった。
幸田 グレートスピリットは先住民の哲学の神髄なのですか。
バンクス 「われわれはみな、魚や動物と関わりがある、つながっている」と言うとき、月は祖母、太陽は長兄とみなされています。
幸田 月がおばあさんで、太陽が一番上のお兄さんなのはなぜですか。
バンクス 太陽は若い人びとに光を示すからです。旅をするとき、人生においても兄を頼りにする。月は女性の体のリズムや種まきの時期を決定するのでおばあさんにたとえられる。太陽でさえも月には逆らえない。コヨーテが「私にあなたの力を見せてください」と月にたずねたところ、月は「おまえから太陽を奪ってやろう」と告げた。コヨーテが首をかしげていると、翌日、日食が起こり太陽が月の後ろに隠れてしまったのです。
幸田 日本語でも「母なる大地」と言います。
バンクス インディアンと日本人はDNAのどこかが同じだと日本人に話しているのですよ。私も生まれたときは蒙古斑がありました。私の子供も全員ありました。
幸田 素敵なお話をありがとうございました。今度日本で走られるときはぜひ私もぜひ一緒に走りたいと思います。
(1999年1月23日東京都内にてインタビュー)

インタビューを終えて

 別れ際にバンクスさんは、ご自身の詩集を手渡してくれました。そこには次のようなことが書かれていました。「私たち(先住民)が、いつも輪になって集うのは、四季や方位がそうであるように、宇宙のすべての生命が循環の輪にあることを思い出すためだ」。今、私たちが注目し始めた「循環型社会」のいわば結晶体のような生き方なのです。
 「企業を非難するのではなく、自分たちの儀式を強化することにした」。その彼の言葉に、大きな障害に直面したアメリカ先住民の痛みの深さと、それを自らの克己心で乗り越えようとする強さを感じました。
 21年前に一人で立ちあがったバンクスさんが、走りながら地道に訴え続けてきた「聖なるメッセージ」は、文化の違いや国境を越えて、人から人へと受け継がれ、共感の輪を広げていくのではないでしょうか。(幸田 シャーミン)



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