第44回 小杉 隆(こすぎ たかし)さん(衆議院議員、GLOBE Japan会長)
<プロフィール>
1959年(昭和34年)東京大学教育学部卒業後、東京放送(TBS)に勤務。65年、史上最年少の29歳で都議に当選。自民党に入り、都議自民党幹事長に。80年に衆議院議員に当選(東京5区)、環境政務次官、党副幹事長などを経て、96年第2次橋本内閣の文相に。93年GLOBE(地球環境国際議員連盟)総裁、95年からGLOBE Japan会長に就任。著書に『ごみ箱の中の地球』(89年、論創社)、『失われた心の教育を求めて』(97年、ダイヤモンド社)、訳書に『地球の掟』(92年、ダイヤモンド社)がある。


GLOBE(地球環境国際議員連盟)

1989年に先進主要国の国会議員によって創設された地球環境保全をテーマとした超党派の国際議員連盟。設立10年を経た現在、メンバーは500人に上り、国連に正式登録された唯一の議員グループとして、「立法」「制度改革」「予算」など立法者ならではのアプローチで地球規模の環境問題に取り組んでいる。第15回世界総会は、沖縄サミットに先立ち開かれるG8環境大臣会合と同日程(4月7〜9日)で、滋賀県大津市にて開かれる。


経済や開発の問題は放っといても進んでいく
環境や教育の問題は政治がリードしていかないと
GLOBE設立に関わる

幸田 GLOBE(地球環境国際議員連盟)は政治家が環境問題でリーダーシップを発揮していこうと、1989年にできた組織ですが、設立以来の最大の成果というのは何だったと思いますか。
小杉 92年のリオ会議を含め、それ以降の環境会議、例えば地球温暖化防止京都会議、北京の女性会議、コペンハーゲンの社会開発会議、カイロの人口会議などへのGLOBEとしての提言はかなり影響を与えました。また、WTO(世界貿易機関)の環境委員会ができたのは、日米欧のGLOBEのメンバーである国会議員が、頑強に環境問題の委員会をつくらせないというブラジルやインドなど開発途上国と直接交渉をした結果です。ですから日本ではあまり知られていませんが、国連ではかなりプレゼンスは高いのです。
幸田 小杉さんご自身が環境問題に関わるきっかけはどんなところからだったんでしょうか。
小杉 私は政治生活に入って35年目なんですけどね、一番最初は東京都議会議員、65年でした。ちょうど東京オリンピックの翌年で、東京は公害のるつぼといわれたんですね。大気汚染、水質汚濁、振動、騒音などさまざまな問題が噴出していた。そこで私は東京で生まれて育って、都議会議員になった者としてこの環境問題、公害問題をライフワークにしようと決心しました。以来、都議会議員を15年、そして国会議員になって20年経ちます。どうも国会では環境問題が非常に位置付けが低いんですね。どうしても経済優先で、口では皆さん環境を言うんですけれど、なかなか実態が伴わない。 私は環境問題みたいな重要だけれども力のあまりない、応援者が少ない、こういう分野こそ政治が出動しなければならない、政治家が取り上げなければいけない、そう決心をしてGLOBEの立ち上げに取り組んだのです。米国のゴア副大統領やニューヨーク選出のすでに引退されましたがジム・ショイヤー米国下院議員、それからEU議会のヘンモムンティング、トム・スペンサーなと語らいました。初めはアメリカとヨーロッパでつくろうかという話があったのですが、日本にはぜひ入ってもらわないといけないという声が両方から出ました。ショイヤー下院議員が「誰か中心になってもらえる人はいないか」と私に相談してきました。ただ理想論だけ並べている人では困る、予算を取ったり、法律をつくったりできる、パワフルなリーダーをということで、私は竹下元総理を推薦したんですね。それからGLOBEという組織ができましてね、私もずっとこの問題に取り組んできました。


環境は票になるか

幸田 よく「環境は票にならない」ということを聞きますけれど、今でもそうですか。
小杉 私は東京選出だから、有権者の理解がある方です。そういう東京ですら、「どうしてその問題ばかりそんなに夢中でやってるんだ、もうちょっと票にもなる、あるいは選挙資金も確保しやすい問題に取り組んだらどうか」と再三言われ続けてきましたよ。最近そういう声がなくなりましたね。それだけ意識が変わったってことでしょうね。金や経済だけではない、環境が大事だという意識がだんだん出てきた。
幸田 地方では、開発志向の考え方はまだ強いですか。
小杉 それは根強いですね。とくに不況が続くと、経済あるいは開発という志向になる。それは無理もない。地方には見るべき産業がない、公共事業しか頼るものがないということですから。だから私はやはり理想論だけでは国全体の関心を引きつけることはできないと思うので、例えば環境に関連した産業、廃棄物処理や自然エネルギー、またはエコツーリズムなど環境に関連した地域活性化策などを活用する。沖縄にしたって北海道にしたって、風光明媚な自然は観光資源であると同時に環境の資源なんです。それから低公害の車、電気自動車や天然ガス自動車、燃料電池で動く車ですとか、活性化すべきものは無尽蔵に私はあると思うんですね。


低公害車とエネルギー政策から温暖化防止

幸田 小杉さんご自身が政治家として一番大事に思っている環境のアジェンダは何ですか。
小杉 今まで一番関心を持って取り組んできたのは地球温暖化問題です。CO2を減らすためにもう10年ぐらい前に、党内に「低公害車普及促進委員会」という小委員会をつくり、初代の委員長になりました。電気自動車、天然ガス自動車、メタノール自動車、それからハイブリッドの4種類の普及を進めてきました。 今からちょうど10年前、90年に政府がつくった率先実行計画では2000年までに低公害車を各省庁で10%持つという目標をたてました。でもまだなかなか達成できていない。
幸田 どうしてでしょうか。
小杉 コストと性能と充填場所、この三つがネックです。文部大臣になった時に大臣専用車に電気自動車を導入しようと思ったら、予算が足りないし、1回の充電で走れる距離も少ない、急ぐときなんかあっという間にバッテリーが上がっちゃいますしね。 天然ガス自動車は比較的走行距離が長いので省庁では天然ガス自動車を導入しているところが多い。天然ガス自動車の充填場所は品川に加えて、環境庁の敷地内につくりました。 この前の東海村の原子力施設の事故以来、原子力発電に対してネガティブな雰囲気になっていますね。京都議定書では日本は90年レベルより2010年までにCO2を6%削減するとしていますが、その達成のために、原発を20基新設することは、政治的には非常に難しくなっている。ですから、別の補完する政策をやっていかないといけません。 自然エネルギー促進議員連盟をつくり、新しい法律を議員立法で今国会中に成立させようとしています。今のところ、日本の太陽光、風力といった自然エネルギー源の目標の3%を少なくとも2010年までに10%以上にできないかと考えています。
幸田 研究予算が、例えば原子力には自然エネルギーの10倍以上も使われ、あまりにもアンバランスです。政治が動かないと予算も動かないのではないですか。
小杉 政府の考えでは、「自然エネルギーは不安定であるし、絶対量が少ないので、主要な源にはなり得ない。石油・石炭、原子力というのがメインにならざるを得ない。自然エネルギーはあくまでも補完的なものでしかない」という発想です。だからそこをもう少し、変えていかないといけません。 私は、新エネルギーと並んで、省エネルギーというのが大事だと思うんですよ。バブル以来日本人の生活はものすごくぜいたくになりました。三つの部門のうち産業部門は比較的省エネが進み、際立って伸びているのが運輸部門と民生部門。これはだいたい年々15〜6%ずつ増えている。ひるがえって家庭内を見渡しますと、コンピューター、留守番電話、ファックス、水洗トイレ、冷蔵庫や電子ジャーなど24時間使っている電気がものすごく増えているんです。これだけで原子力発電所4基分使っている。自動販売機の消費電力だけで原発1基分です。24時間営業のコンビニが日本全国で3万軒を超している。あまりにも便利さを追求して、それに慣れた生活を送っているのが日本人です。だけどそこまで便利にしなくても、もうちょっと抑えてもいいじゃないかということですね。
幸田 大量消費・大量廃棄の社会を変えるというのであれば、資源節約であまり捨てない、つまりものを長持ちさせて使うシステムづくりを政治の力で動かしていただきたい。例えば電気製品などのパーツを長期間保有する、保証期間を延長するなど。
小杉 したがって循環型社会基本法の中でも、基本的にはまず資源の投入を減らすリデュース、1回使ったものをもう1度再使用するリユース、それからいったん壊して再生するリサイクル、この三つがキーワードになっている。出てしまったものは、焼くか、埋め立てるかという発想から、生産から流通・消費まで全部を一つのサイクルとして考えていかないといけないと思います。
幸田 小杉さんはこれからも環境をメインにしていかれるのですか。
小杉 ええ。経済の問題とか開発の問題は放っといても、進んでいくと思うんですね。だけど環境問題とか教育の問題というのはやっぱり政治がリードしていかないといけません。私はできるだけ弱い部分に力を入れるというのが政治家の使命・役目だと思っていますよ。


米国と中国の目を「環境」に向ける

幸田 沖縄サミットを控えて4月に日本でGLOBEの総会がありますが、21世紀に政治が何ができるかということが本当に問われている。一番期待したい成果、これから取り組んでいこうというテーマは何ですか。
小杉 三つテーマがあります。一つは地球温暖化、二つ目はWTO、三つ目がガバナンス、統治です。ガバナンスは、例えば政府と議会と企業と国民がいかに連携をとるか、たくさんある国際条約をどうやってうまく機能させていくか、または水の問題や廃棄物の問題の関連性をどう図るかという問題です。沖縄サミットへの提言を考えています。
幸田 アメリカの参加状況はどうですか
小杉 悪いです。今一生懸命口説いているんですよね。
幸田 アメリカの今の議員にとって、それこそ票にならないという感覚なのでしょうか。温暖化のことを考えますと、アメリカがどう関わるかは重要なポイントです。
小杉 最大の排出国ですからね。それと中国です。2002年のリオ+10の会議はぜひ中国でやるべきだと私は考えています。中国は経済発展がこれから激しいダイナミックな地域ですから。中国の12億の民がこの問題の重要性を認識する絶好の機会になるのではないでしょうか。
(2000年3月1日東京都内にてインタビュー)

インタビューを終えて 

小杉さんは「エンバイロンメンタリー・サウンド・ライフスタイル(環境に良い暮らし方)」を心がけている、と言っていました。永田町の衆院議員会館には、着替えのスーツが常に2、3着置いてある。毎日の通勤は、その日の日程に合わせて、40分かけてのジョギング、自転車、電気スクーター、電車、車と、5種類のメニューの中から選ぶのだそうです。 1996年に文部大臣になられた時には、きっと環境と教育を結ぶ何かをなさるのではないかと期待していましたが、思ったとおり、「小中学校の教科書を再生紙化できないだろうか」と働きかけ、そのかいあって、去年から義務教育のすべての教科書が再生紙化されました。 環境問題の前進には、政治のリーダーシップが必要なのは言うまでもありません。しかし、公共事業や防衛問題などと異なって、応援をかって出る政治家はまだまだ少ないのが現実です。そんな中で、国内だけでなく、国境を越える超党派の議員同士の横のつながりを築いて、政治や世論を内外から動かしていこう、という小杉さんたちの取り組みは、貴重な一歩と言えるでしょう。環境問題の解決というゴールに向かって、走り続ける小杉さんにエールをおくりたいと思いました。 (幸田 シャーミン)



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