第46回 青木 康芳(あおきやすよし)さん(東北電力取締役火力部長)
<プロフィール>
1960(昭和35)年日本大学工学部卒、東北電力に入社。火力部火力計画課、仙台火力発電所長などを経て、波力発電実験施設のある原町火力発電所建設所長、東新潟火力発電所長を歴任。99年、東新潟火力発電所において世界で最高水準の熱効率を達成した高効率ガスタービンの開発に成功した。「西暦2000年世界地熱会議」(名誉議長:明間輝行東北電力会長)の運営主体となる国内組織委員会の委員を兼務。99年より現職。
西暦2000年世界地熱会議

5月28日(土)〜6月10日(日)(前半は九州・大分、後半は東北・秋田、岩手が会場)

各国の地熱政策や地熱に関する研究発表にあわせて、展示や短期研修、九州・東北の地熱関連施設などへのフィールドトリップが計画されている。
アジアで初の地熱会議
幸田 柳津西山地熱発電所を見学させていただきました。日本の地熱発電の半分は東北産だそうですね。
青木 やはり地熱発電は九州と東北が中心です。とくに東北地方には温泉もいっぱいあり、開発できる素地があるということです。
幸田 今、自然エネルギーが注目されています。とくに環境に関心のある人たちの中では期待が高いわけですけれど、例えば地熱の将来性はどのようにお感じですか。
青木 電気業界も競争時代を迎えています。井戸を掘るのにコストがかかり、今まで通りのことをしていたのでは厳しい状況です。しかし、国産の地球にやさしいエネルギーですから、いろいろと工夫・開発しながら、少しでも安くして広めていきたいと思っています。
幸田 素人の感覚ではそんなにお金がかからないように思うんですけれど。
青木 非常にリスキーなんですね。掘って蒸気が出ないと発電施設にならない。発電をするには、温泉の井戸と違って、約2,000mくらい掘削しなくてはいけません。しかも1本だけ掘るわけではなく、必ず熱水を地下に戻すための井戸も掘りますので倍の本数が必要になります。そういうことから単なるそろばん勘定だけではなかなか進まないですね。
幸田 コストがかかるもう一つの理由は、例えば国からの補助がそういうものに対して少ないのではないですか。
青木 本当にあるのか、どのくらいの量かなど、3段階に分けて調査をしますが、そういう調査の部分のリスクを国が負担してくれれば非常にやりやすい。そういう方向に来つつはあるのですが。
幸田 東北電力の地熱発電量のシェアはどのくらいなのですか。
青木 地熱は日本一です。4ヵ所5ユニットありまして、それは日本の地熱発電の約50%を占めています。
幸田 5月の末から6月の初めにかけて東北地方で「西暦2000年世界地熱会議」が開かれますよね。これは日本では初めてですか。
青木 日本というより、アジアでは初めて世界地熱会議が開催されます。前半は九州で後半が東北で行われ、世界各地から約1,500人が集まる予定です。地熱資源の開発・利用に関する科学技術の発展と世界各国の地熱関係者の国際交流を図る目的で開催されます。絶好の機会ですので、日本の地熱発電設備の技術と東北地方の文化を世界に発信していくつもりです。当社の明間会長が本大会の名誉議長の職を担っており、現在、社をあげて運営協力の準備をしているところです。
幸田 技術開発のレベルについて、日本はどのクラスにあって、世界にこれからどのような役割を期待されていますか。
青木 日本は残念ながら量的に一番ではないんですね。地熱発電容量の一番はアメリカ、2位はフィリピン、続いてメキシコ、イタリア、それから日本、ニュージーランドの順。ただ日本の技術力は非常に高く世界をリードする立場にあり、プラントも輸出しています。 世界地熱会議で日本の持つ、地熱発電技術や地熱探査技術、そして熱水利用技術などを世界にアピールし、さらなるリーダーシップを発揮していきたいと思います。
幸田 地熱発電は自前のエネルギーであるということ、しかも今日発電所を拝見したところ、水を戻す循環型であるということで、再生可能という意味がよくわかりました。その価値というのはこれからますます重要になっていきますね。
青木 いわゆるゼロエミッション・プラントです。廃棄物はいっさい出ない再生可能エネルギーです。
まだまだ足りない自然エネルギー研究開発
幸田 温暖化の問題を考えましても、自然エネルギーに対する期待は21世紀にもっともっと高まっていくと思います。人びとの健康への意識や自然を大事にしようという、いろいろな価値観からしても、自然エネルギーの評価が今まで以上に高まっていくと思います。日本は持っている技術力、潜在能力のわりには、まだそこに投資されているお金が少ないような気がするんですね。それは東北電力としてはどのようにお考えですか。
青木 ついついコストの話が出てしまいますが、今年の3月21日から特別高圧電力の小売自由化が始まりました。コスト競争のあまり環境問題がなおざりになるような風潮になるとしたら、それは本筋ではない。経済性と環境性を同時に達成していくということを、あらゆる面で模索して進めていかなければなりません。公益的な使命を十分踏まえてやっていかなければならないということですね。
幸田 日本は化石燃料では資源小国と言われても、太陽、地熱、波力、風力を入れると最も資源豊かな国の一つだと言う人もいますが、いかがですか。
青木 この分野では電力会社として、当社が一番進んでいるのではないかと思います。例えば風力ですが、青森県津軽半島の竜飛岬にウインドパークとして風車を11基つくりすでに1992年から試験を行っております。さらに「東北自然エネルギー開発」という新会社を立ち上げ、2001年から秋田県能代市で24基(600kW×24基)の営業運転を開始する予定です。
幸田 日本の場合、地熱と太陽と波力、どれがグリーンエネルギーの中でボリューム的に一番メインになっていくと思いますか。
青木 それは地熱です。圧倒的に多い。東北電力が22万kW、日本全体で50万kWです。波は現時点で当社の持つ130kWが最大ですね。風力にしても11基並んでも3,000kW程度です。
幸田 素人からすると、風力の11基というのは少ないような気がします。風車を50基、100基とつくれないものですか。
青木 多く設置することはできるのですが、安定性に欠けるんですね。風がやんでしまうと回らない。青森県や秋田県などの日本海側では冬にシベリアから北西の風が吹いてきまして、非常に条件がいいのですが、夏は日本海側はベタ凪で海が静かなんです。風車があまり回らない。ですから稼働率が低くなり、投資しても使える時間が少ない。それから風が強く吹いたり弱く吹いたり、電気の質が必ずしも一定しないなど問題があります。それに比べて地熱は常に一定で、出力は夏でも冬でも安定しています。地熱はそういう意味で自然エネルギー、再生エネルギーの王様ということができるでしょう。
幸田 明日は福島県の原町火力発電所にある波力発電の実験施設を見せていただきます。日本は島国だから波力はどこででもできると思っていましたけれど。
青木 波力の方が風力よりもっと厳しいのです。世界中で商用でやっているというのはまだ聞いたことないですね。実験段階です。やり方はいろいろあるんでしょうけれど、私どものやり方ですとまだまだ大変だなという感じですね。
幸田 東北電力は日本の再生エネルギーのパイオニアとお考えですか。
青木 そうですね。そういう意味では実用化にならなくても、一生懸命先端を走っているとわれわれは自負しております。ですから、かなり研究開発にお金をかけております。
幸田 火力や原子力から見ると、新エネルギーの研究費はどのくらいですか。国の場合、原子力に比べ、新エネルギーの予算はかなり少ない。
青木 ここ数年は年平均で5億円くらいです。ウインドパークや波力のように他社ではあまりやっていないような開発研究を先駆けてやっています。
世界一の熱効率を達成

幸田 東北電力は世界で最も熱効率のいい発電所をお持ちということですが、どのようなプラントなのですか。
青木 世界一省エネルギーのプラントである「大容量高効率コンバインドサイクル発電プラント」を11年かけて研究開発し、昨年7月8日に東新潟火力発電所で営業運転を開始しました。これまで未達成だった夢の熱効率50%以上というレベルを今世紀中にクリアできたわけですよ。その結果が認められまして、日本産業技術大賞と内閣総理大臣賞を受賞しました。
幸田 何が一番大きかったのでしょう、省エネということに関して。
青木 大容量高効率コンバインドサイクル発電プラントというのは、スーパージャンボのジェットエンジンと同型で、4倍もの出力のあるガスタービンで発電機を回します。さらに、そこから出る排熱風でお湯を沸かす。そしてお湯から蒸気を取り出して地熱と同じような発電をする。二段発電です。飛行機では捨てている排熱を再利用して、大幅な省エネルギーを達成しているんです。
幸田 どんなことに一番ご苦労があったのでしょうか。
青木 このガスタービンは燃焼温度を上げれば上げるほど、性能が向上します。しかし、温度が上がるとメタルが溶けてしまう。そこで私たちは、1,500。Cの燃焼温度に耐え得る冷却技術と材料を開発しました。そして熱効率が今まで40%くらいだったものを50.6%まで高めることに成功しました。従来型のプラントと比べますと、LNG(液化天然ガス)が年間37万tくらい節約できます。これは新潟市の一般市民の電気を4年間賄うくらいの節約量に相当します。つまり1年間で新潟市民の4年分の電気を起こしてしまうということです。二酸化炭素も約22%削減していることになります。従来型の石炭などの発電プラントに比べますと、約半分くらいになってしまいます。
幸田 化石燃料と自然エネルギーの電源構成比は、東北電力の場合どのような割合になっているのでしょうか。
青木 99年度で水力16%、石炭24%、ガス28%、原子力19%、地熱2%、石油その他が11%の割合になっています。エネルギーセキュリティーの観点から、電源構成に「ベストミックス」を図っています。自然エネルギーといっても、水力と地熱をあわせても2割に足りず、風力はまだまだコンマ以下というのが現状です。
幸田 新エネルギーの比率をもっと高めるためには、何が必要でしょうか。
青木 新エネルギーを積極的に導入していくべきだという国民的なコンセンサスを大前提としながらも、結局は技術開発だと思います。それも経済的制約などからそう簡単にはいかないので、国からの支援などが必要です。しかし、これも技術開発の成果次第です。地熱でも風力でも、開発していいものができれば安くできる。また、風力と太陽光の組み合わせのようにハイブリッド方式なども念頭において、いろいろな面での技術開発をもっとしていかなければならないと思います。
幸田 どうもありがとうございました。

(2000年4月13日宮城県仙台市東北電力本社にてインタビュー)
インタビューを終えて
再生可能な自然エネルギーである地熱発電と、これから実用化が期待されている波力発電。この二つを東北電力で取材して、新しい世界に果敢に挑む技術者たちにエールを送りたい気持ちになりました。 21世紀を前に、私たちは、地球の温暖化、汚染、資源の枯渇などの問題をできるだけ発生させないエネルギー源を見出さなければならないところに来ています。自然エネルギーはその点では優れています。しかし、例えば風力は風次第、波力は波頼み、そしてコストの問題など、さまざまなハードルがあることも事実です。 青木部長をはじめとする技術者たちが、輝いているように見えたのは、そうした高い技術の壁に、真っ向から取り組んでいたからでしょう。その努力を結実させるためには、政府の自然エネルギーに対するより積極的な取り組みも欠かせないと思います。(幸田 シャーミン)



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